今回は ブドウの 台木 の話です。
「台木」って言われても、いまいちイメージしにくいですが↓コレ(-ω-)/
もう19世紀後半からのヨーロッパのフィロキセラ被害のベタな内容は割愛します。さすがに大丈夫だよね?
↓仏では1875年→1899年にかけて生産量が約1/4に。ヨーロッパ全体だと2/3から9/10がやられたと見積もられているよ。ちなみに当時やけっぱちになった生産者が地中から毒素を抜こうとして『生きたカエル』を埋めたそうな( ゚Д゚) マジカ...
↓フランス語は分からないけど、イラストが楽しい!
ここで、試験的に1つ目のクイズ(-ω-)/
(2019年ソムリエ教本 14ページより)
【問1】19世紀、フランス政府 が アメリカ に派遣した 研究者 がみつけた フィロキセラ耐性 をもつ 3大台木 のうち 「乾燥土壌に強い、石灰質土壌に強い、挿し木の際に根がでにくい」という特性をもつものはどれか?
1:リパイア種
2:ルペストリス種
3:ベルランディエリ種
↑ちなみにこのオジサンがアメリカに行って見つけてきたやつね。当時解決策の発見に(安くても) 現在の1億8千万円くらいの賞金がかかっていたとか。
19世紀後半のフランス・フランは現在の日本円に換算すると約何... - Yahoo!知恵袋
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答え : 3:ベルランディエリ種
ちなみに↑選択肢は3つとも北米のフィロキセラに耐性を持つものなんだけど
石灰質に強いのは 3:ベルランディエリ種 だけだった( ;∀;)
教本だと整理されていないので表にまとめておきまっす。
< フィロキセラ耐性をもつ3大台原種の特徴 >
個人的にこのまとめは割と重要だと思うの。
ルペストリス | リパイア | ベルランディエリ | |
名前の由来 | 「岩ぶどう」 | 「川ぶどう」 | 人名より |
似たブドウ品種 | カベソー | メルロ | - |
ブドウの実り | 晩熟 | 早熟 | - |
収量 | 少ない | 多い | - |
挿し木の際の根の出やすさ | 〇 | ◎ | × |
最適な土 | 乾燥した | 湿った | 乾燥した |
石灰質土壌との相性 | × | × | ◎ |
ルペストリスをカベルネ・ソーヴィニョン、リパイアをメルロになぞらえると覚えやすいよ(-ω-)/
http://cdn.differencebetween.net/wp-content/uploads/2018/06/Cabernet-Sauvignon-VERSUS-Merlot.jpg
ご存知の通りヨーロッパは石灰質土壌が多い↓ので、石灰質土壌と相性が悪いのは致命的( 一一;)、なので地域によっては ベルランディエリ はできるだけ混ぜていた方がベター。でも挿し木の際の根の出やすさが "悪い" っていう欠点も。
↑表をじっくり見ると3つともそれぞれ一長一短あって面白いですね~。
しっかりキャラ立ちしておる。ウム (´_ゝ`)
こうなってくると、土地や栽培するブドウ品種の特性に合わせて良さを組み合わせたいってなったわけです。
そして研究によって生まれたのが、↑3大台木原種の交雑種でっす。
で、これに関するクイズ!
(2019年ソムリエ教本 14ページより)
【問2】上記、3大台木 の交雑種で「根は浅め、やや湿った土壌を好む、穂木との相性が良い」という特徴をもつものはどれか?
1:3309
2:101-14
3:SO4
4:5BB
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答え : 2:101-14
教本では以下4種のみ。SO4と5BBの文言がほぼ同じ(樹勢が 強め vs 強い のみ)なので、出るとすれば3309か101-14としか考えられません!
< フィロキセラ耐性をもつ3大台木の交雑種 - 4つの特徴 >
交配 | 耐乾 | 耐湿 | 根のはりかた | 発根の良さ / 台負け (≒穂木との相性) | 樹勢 | |
3309 | リパリア×ルペストリス | △ | 〇 | 中程度 | 〇 / 少ない | 弱め |
101-14 | リパリア×ルペストリス | × | 〇 (浅い深さで) | 浅い |
◎ / ややする ※ |
- |
SO4 | ベルランディエリ×リパリア | ◎ | ◎ | 強い・やや深い | ◎ / する | 強め |
5BB | ベルランディエリ×リパリア | 超◎ | △ | やや浅い | 〇 / ややする | 強い |
覚え方としては「名前が3文字」ならベルランディエリが入ってる。あとは数字の少なさ(3... vs 1...)で根が浅いとかコジつけてはいかがでしょうか( 一一;)?
※やや「台負け」するものの発根が良いので、総合した結果「穂木との相性が良い」と教本は書いているのだと想像しております。
http://www.uehara-grapes.jp/hyou/syuyou_dai.html
http://www.uehara-grapes.jp/daigi/index.htm
最近問題がマニアックになってるから上記2問の台木の種類とか今後は結構な確率で出ると思う。だって日本酒の酵母名まで出てるくらいだから( 一一;)
で、最後はおまけのクイズ!
(2019年ソムリエ教本 14ページより)
【問3】1980年代、カリフォルニア がみまわれた 病虫害名 と その際に問題となった 台木の属性 について述べよ!
一般教養として。お客さんとの話のネタに使ってね。
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【答え】フィロキセラ(バイオタイプB)。広範囲で使用されていた台木の AXR は 交配品種の片親 が フィロキセラに耐性がない ヴィティス・ヴィニフェラ種 だったから。
ちなみに、AxRとは アラモンというヴィティス・ヴィニフェラ種に さきほどのルペストリスを交配したハイブリット品種。
これは19世紀後半に開発された品種で最初のウチはフィロキセラにも有効だったんだけど、わずか30年足らずでヨーロッパ・南アフリカでは被害を受けるようになっていた。
でも、カリフォルニアでは被害が少なかったから1980年まで使い続けていた。
その理由はこの台木を使うと育てやすいし、実際それで儲かってたから(; ・`д・´)!
で、1960年~1980年のナパとソノマは60%~70%がこの台木だったので壊滅的な被害を受けたわけです。
実は1958年に「AXRこそカリフォルニアに最も適した台木!」とアナウンスされた事があったんだけど危険性に関しては一切触れられていなかった。この戦犯は教本にもよく出てくる Davis校 との見解もあります。生産者の民意や何かの圧力があったのかもしれないけど、このタイミングでちゃんと発表しておけば良かったのにね~。
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【編集後記】
...って、カリフォルニアのフィロキセラの件はいつもの麻井本でも紹介されてます。酒業界の進化も失敗もだいたい金がからんでる...( 一一;)
今回書いてて思ったのは
↑チャレンジャー号、JR福知山線も然りで
こういう 事故の原因・流れ のパターンって...
1:危険性が分かっている効率的な方法がある
↓
2:組織的・社会的プレッシャーで、それを使うのが前提・当たり前になる (すり替わる)
↓
3:危険なものである事を立証できないので使う
↓
4:事故
...みたいな感じ。
ワインやブドウ栽培からも人生の教訓を学べるような気がします。
個人的にはクローン・セレクション vs マサル・セレクションで多様性の重要さを説いている箇所が好き!
以上