ソムリエ・ワインエキスパート試験に絶対に合格したいアナタへ!

独学での勉強方法をご紹介。オリジナル問題集や過去問を解いていただきながらポイントを解説します。


【ドイツ】モーゼル - 歴史 - 『甘口ワインブーム』(1950~80年代後半)


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引き続きドイツ・モーゼル地域歴史です。

 

今回のテーマは↓年表の最後の↓赤□

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ソムリエ教本('20) 126ページ

1950年代から80年代前半にかけて甘口ワインブームに乗って栽培面積が急増し、斜面以外の平地にもブドウ畑が目立った。しかし2000年前後から...高品質な辛口リースリングが注目されるようになり...」

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ここを深掘りしていきたいと思います。

 

▼ブームの原因 (消費者側)

▼古い「甘口ワイン」のCM


Blue Nun Wine Commercial (1979) 

 


原田知世 CM マドンナ

まず古いCMを見てみましょう!

海外で甘口ワインブームと言えば、代表的なのがドイツの甘口ワイン リーブフラウミルヒ※「ブルー・ナン」。ちなみに、日本ではマドンナという商標で現在でもサントリーが販売。バブル世代に馴染みの方が多いイメージでっす。

モーゼルのワインではありませんが "ドイツくくり" ってことでご容赦下さいm(_ _)m

 

▼流れ

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Brewers and Distillers Found Creative Ways to Survive - Prohibition: An Interactive History

さてさて、この世界的な『甘口ワインブーム』は、現在でもワイン消費をリードするアメリカがキッカケだと言われています。それまでの流れを整理しておくと... 

・ゴールドラッシュ(19C 西海岸) - 労働者にワイン需要生まれる

・フィロキセラ被害(19C後半~) - 葡萄農家 - 栽培あきらめ気味に...

・一般家庭 - 自家製ワインブーム(↑イラスト) - 不味さを甘くして誤魔化す!

禁酒法(1920-33年) - (↑を後押し・助長)


・WW2後(50~80年代前半) - 甘口ワインブーム到来 - (↑で慣れてたから)

「辻調グループ校 コンピトゥム Compitum」より

...みたいな感じ。自家製以外の内容は試験的に大切かも

 

これに加えて、よくご紹介しているウスケ本には禁酒法がアメリカ人を馬鹿舌にした!」といったニュアンスが書かれていますが、その理由は...

 

▼世界各国の「ワイン文化の発達プロセス」

...として

【前提】ある程度「寒い」地域がベター ≒ 煮込む食文化圏 → 料理・味が繊細(≒薄い) → 味覚が発達しやすい

・ワイン伝来

・(味覚の発達過程→) 甘口ブーム ≒ 低品質がまかり通る


・(味覚の成熟→) 辛口ブーム ≒ 高品質を求める

・自国のワインが国際品種で世界に勝負できる → 評価を受ける

・地ブドウが注目され始める

...といった段階をたどる(らしい)ですが、アメリカは禁酒法によって飲酒の文化が断絶され、★のところまで引き戻されてしまったとのこと。↑流れの発想はワイン文化を俯瞰する視点として超重要!

 

ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち (小学館文庫)

もちろんこれは日本でも同じなので、是非『ウスケボーイズ』を読んで「どの出来事がどの段階に当てはまるか?」を整理しておかれる事をオススメします。

  

▼農家への影響

さてさて、それでは次にドイツ国内の生産者側がどうだったのか見てみましょう。

 
▼各ブドウ品種の栽培量

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「ミュラー・トゥルガウ - Wikipedia」より

この『甘口ワインブーム』に乗っかるように利用され始めたのが、リースリング x マドレーヌ・ロワイアル の交配によって生まれた ミュラー・トゥルガウ です。

 

▼「ミュラー・トゥルガウ」 ができた背景

試験的に無理矢理この交配を暗記している方も多いかもしれませんね~。(無論、昔の筆者もそうでした!) 単純にまとめると↓のイラストになるんだけど、参考文献が非常に勉強になるので是非読んでみて下さい。理由が分かります!

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「ミュラー・トゥルガウ - Wikipedia」より

ほとんどのブドウは、2つの別々のブドウの品質を引継ぎ、両方の性質を併せ持つ新しいブドウを作りたいという欲求から作られてきた。

19世紀後半、ミュラー博士がガイゼンハイムブドウ育種研究所でこのブドウを作った時、彼の意図はリースリング品種の強さと複雑さと、シルヴァーナー品種 (〇 : マドレーヌ・ロワイアル) が持つ早熟であることを掛け合わせることだった。得られたブドウはこれらの2つの性質を完全には達成しなかったが、ドイツのワイン生産地域の多くに広く植え付けられた。

1970年代にミュラー・トゥルガウはドイツで最も植えられたブドウになっていた。この品種の人気の理由は、比較的広い気候範囲、土壌タイプで栽培ができるということである。これらのブドウの多くは、他のワイン用ブドウの栽培には特に適していない平坦な地域に植えられた。なぜなら、平坦な地域の主な代替作物であったテンサイダイコンよりも利益が大きかったからである。ブドウは早く成熟し、大量の収量をもたらし、例えばリースリングよりも植え付け場所としての要求は少ない。ミュラー・トゥルガウのワインは、酸度が低いために軽く、フルーティーである。比較的若いうちに飲むことがあるが、ほとんど例外なく熟成とともに良くなるとは考えられていない。これらの事実は、ミュラー・トゥールガウが、1980年代までかなり人気があったリープフラウミルヒピースポーター英語版など、ドイツのミディアムスイートワインを安価に生産する経済的な方法を提供したことを意味した。

ミュラー・トゥルガウの発展のターニングポイントは、1979年の冬であり、1月1日に温度が急激に低下し、多くの地域で20°F (−7°C)にまで達したが、新品種の大部分を荒廃させた。何百年もの選択によって、はるかに丈夫な茎を有するリースリングのような品種には影響しなかった。それ以来、ワインメーカーは幅広い種類のブドウを栽培し始め、ミュラー・トゥルガウは現在、ドイツではリースリングほど広く植栽されていないが、ドイツにおいても世界でも、まだ重要な品種である。

Mosel (wine region) - Wikipedia

The Riesling grape, grown on 59.7% of the region's cultivated vineyard surface in 2008,[17] is widely considered the most prestigious and highest quality wine grape of the Mosel but it cannot be planted on every vineyard site due to difficulties the grape has in ripening in particularly cool climates. Factors such as altitude, aspect and sunlight exposure can have a pronounced effect not only one the resulting quality of the wine but also whether the Riesling grape will even ripen at all. A positive characteristic of the Riesling grape is that despite less than perfect ripeness it can still create a wine of finesse and elegance that would escape most other grape varieties.[5]

In place of Riesling, the easier cultivated Müller-Thurgau grape (14.7%) and other Riesling crossings like Kerner (4.6%) were planted in large quantities on the sites that were not suitable for Riesling, and which in many cases had been previously used for other agricultural purposes. A negative consequence of these large-scale plantings is that the wine produced from these sites are typically of a lower quality than Riesling wines which in turn has a depressing economic effect on the prices of all Mosel wines. While consumers have benefited with top quality Riesling wines being underpriced in comparison with some of the world's other great wines from places like Bordeaux, Burgundy and California, the economic hardship created by the prices has caused some of the smaller Mosel vineyards to go out of business.[3]

あ、ケルナー(リースリング x  トロリンガー)もミュラー・トゥルガウと同じ文脈ですね。最後の「悪貨は良貨を駆逐する」的なのが悲しい。

数少ない成功した品種「ケルナー」の特徴

 

▼ブームの終焉

ja.wikipedia.org

さて、この『甘口ワインブーム』にトドメをさしたのが↑ジエチレン・グリコール(不凍液)混入事件です。

 

ソムリエ教本('20) 115ページ

「...(同事件)で甘口ワインへの不信感が蔓延し、生産者はドイツ国内向けには辛口ワインに活路を求め、甘口ワインは輸出に力を入れた

 

...と、ありますが、ここからの↑原田知世のCM('88年)ってわけです (笑) 「日本ならまだ売れるだろ~」的なヤツだったら軽く舐められてますね。

 

数回に分けて長らくお伝えしてきましたが、ここまでがモーゼルの歴史でした~。

次回モーゼルの畑について書く予定です。

 

 

【編集後記】

うかつにモーゼル歴史に踏み入ってしまったものの長かった...( 一一;) 死にそう...

実はもっと書きたい事は山のようにあったのですが、キリが無いので薄っすらでもギリ試験に関係ある範囲に留めておきます。マジ内容薄くってゴメンナサイ。

 

btw、↑のグラフを眺めているとリースリングの減少量=ドイツ人が甘口ワインブームでサボってた分に見えてきました (笑)

それと、経済性や利便性で育てる農作物やブドウ品種が変わってきますよ!って話なんですが、交配技術が進んでも昔からやってきたローマ人の知恵が今も変わらず色あせていないってのが素晴らしい。

 

よくよく、調べてみるとリーブフラウミルヒに関しては業界のフィクサー的な人↓もいたようですが、あくまで甘口ワインを飲む素地が出来た上での銘柄ってことで...

ピーター・M・F・シシェル~CIAからブルー・ナンまで - ヴィニクエスト~グローバルな視点からワインの情報を。

 

ちなみに「質より量」となったのは仏ボージョレも同じ。↓France24(=あちらのNHK的なやつ)で、自分らは『成功の犠牲者』だという被害者ヅラには絶句です( 一一;) 荒稼ぎしておいての、この態度はさすがフランス人! (5分11秒~)  ってか全体的にアジア人ディスり気味の映像という鬼畜っぷり。これ見て日本人は怒るべき!

【動画】France’s love/hate relationship with Beaujolais nouveau!

 

あと、不凍液混入事件を取り上げましたが、こんな感じで欧米で事故があると何故か日本に回ってくる罠 あ、国内でも食材の「産地ロンダリング」とかあるけどね~

チェルノブイリ・パスタ 1980年代末のイタメシブームはセシウム汚染小麦の処分だった。(再掲載) - 「北の山 じろう」日記(時事と日常)

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そうそう、最近は「種苗法」が話題になっていたので↓映画を観ました。『遺伝子組み換え食品』のヤバイところは植物にもの凄い毒性の高い農薬への耐性をつけているってところ。無論その農薬を使うわけで、近くの他の動植物は住めなくなり「緑の砂漠」が広がっています。結構エグい内容で無力感しかありませんが、そういやビオワインとかこの流れの反動なのかな?とも思ったり。あ、そうか、モンサントがロックフェラー系だからロスチャ系が映画で叩いてんのか (自己解決) って、いずれのファミリーにせよ迫りくる危機に間違いない!


映画『モンサントの不自然な食べもの』予告編

ロックフェラー財団 - Wikipedia

 

以上